こんにちは。
ころぴす@kabumameta0629です。

現在私は米国中心にディフェンシブな優良資産株を毎月最低50万程買付し、配当を再投資するという地味で退屈な投資スタイルを採用しています。


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1.はじめに

ブリティッシュ・アメリカン・タバコ(以下、「BTI」という。)の更なる下落が止まりません。

ご存知のとおり、今回のBTIの大幅下落の要因は、米食品医薬局(FDA)が葉巻メンソールタバコの全面的な規制(以下、「本件規制」という。)を検討しているという報道が伝わったことによるものです。

FDAによる本件規制が現実化すれば、米国での売上・利益が大きな比重を占めるBTIにとって大打撃は避けられません。

ですから、本件規制は法廷闘争(裁判)に持ち込まれる可能性が高い(※)と思われます。
(※ドイツ銀行のアナリスト、Gelly Gallagher氏もタバコ会社は規制のプロセスを遅らせる為の法的挑戦を余儀なくされるとコメントしています。)

そこで、今回の記事では、本件規制が裁判所による司法審査に耐え得るのか、言い換えれば、裁判所のお墨付きを得られるのかにつき、法的観点から分析したいと思います。
2.裁判所の審査基準

一般的に、法律等による規制が妥当かどうかにつき裁判所で争われる場合、裁判所は次のようなステップでその規制の妥当性を審査(判断)することとなります。

【裁判所の審査基準ステップ】
(※下記基準は裁判所の代表的な審査基準の一つ。)

①規制の「目的」が合理的か
規制の「目的」が合理的だとしても
「目的」達成の為の「手段」が合理的か、かつ、その「手段」が規制の「目的」達成に役立つか(同じ「目的」を達成できるより緩やかな規制「手段」が他にあるか)


まず、裁判所は「目的」をチェックし、「目的」にOKが出れば次に「手段」をチェックし、「手段」にもOKが出れば、晴れて規制は妥当であると結論づけるわけです。

ただ、こうして字面だけを見ても、全く意味不明ですよね。以下のような具体例を見て頂けるとよりイメージしやすくなると思います。

【①規制の「目的」が合理的かの具体例】

ころぴす国の大統領ころぴすが、次のような法律を制定しました。

「今後、全ての職場において、男性の給料・時給を女性のそれより3倍支払わなければならない。その「目的」は、男性優位社会の実現にある。」

皆様、この法律の「目的」どう思いますか?
尋ねるまでもないですよね。男性優位社会の実現なんて「目的」は明らかに不合理なわけです。

ですからこんな法律を制定しても、すぐに裁判所で退けられてしまいます。なぜなら、法律の「目的」がそもそも合理的とは言えないからです。

【②「目的」達成の為の「手段」が合理的か、かつ、その「手段」が規制の「目的」達成に役立つか(又は同じ「目的」を達成できるより緩やかな規制「手段」が他にあるか)の具体例】

またまた暴君ころぴすが、次のような法律を制定しました。

「今後、世の中に存在するTVゲーム・携帯ゲーム等の一切の使用を禁ずる。その「目的」は、子供の学習時間の十分な確保にある。」

皆様、この法律の「目的」はどう思いますか?子供の学習時間の十分な確保、先ほどの男性優位社会の実現よりはだいぶまともですよね。子供にはしっかりとお勉強してもらおうということですから、この法律の「目的」は合理的と評価していいと思います。

そこで次のステップである「手段」をチェックします。ここでいう「手段」とはゲーム類の一切の使用禁止ということです。皆様、この「手段」どう思いますか?
結論から言えば、この法律は「手段」のチェックでひっかかってしまいます。

まず、ゲーム類一切使用禁止という「手段」厳しすぎるということです。ゲームで遊びながらもきちんと学習時間を確保できている子供はいくらでもいるわけです。にも関わらず一律に禁止してしまうというのはやり過ぎでしょう。
よって、この法律は「手段」が合理的でないと評価されます。

また、ゲーム類一切の使用を禁止しても、世の中には他の娯楽がいくらでもあるわけです。ゲーム類を一律禁止したからといって、ただちにこの法律の「目的」である、子供が十分な学習時間を確保できるようになるとは思えません。
よって、この法律はその「手段」がその「目的」達成に役立たないと評価されます。

以上から、この法律は「目的」は合理性を有するものの、「手段」が合理的でない、かつ、「手段」が「目的」達成に役立たないと裁判所に評価され、退けられてしまいます。


繰り返しになりますが、要は、①「目的」をチェックして、次に、②「手段」をチェックして、共にOKとなってはじめて、裁判所のお墨付きが得られるよということです。
3.FDAの本件規制へのあてはめ

では、FDAによる本件規制について、その「目的」・「手段」をそれぞれチェックしてみましょう。


(1)本件規制の「目的」が合理的か

FDAによる本件規制の「目的」は、(喫煙に伴う)健康被害の削減及び(若年層の喫煙率急増を受けて)若年者の喫煙防止にあります。

言うまでもなく、健康被害の削減若年者の喫煙防止といった「目的」については異論を差しはさむ余地はありません。

よって、本件規制の「目的」は合理的と評価できます。

(2)ア.本件規制の「手段」が合理的か、かつ、イ.規制の「手段」「目的」達成に役立つか(ウ.同じ「目的」を達成できるより緩やかな規制「手段」が他にあるか)

本件規制の「手段」は、葉巻メンソールタバコ(以下、「メンソール」という。)の販売を全面的に禁止するというものです。

ア.では、まず、メンソール販売の全面禁止という「手段」は合理的と言えるでしょうか?

この点、FDAはメンソールが他の通常のタバコと比べ、その吸いやすさなどから、より依存性が高く、中毒症状を発症しやすく、結果として健康被害の拡大につながることを憂慮しているようです。

確かに、私自身もかつて喫煙者でありメンソールを好んでいたことに鑑みれば、上記のFDAの見解に一定の理解を示すことはできます。

しかし、一部の消費者がメンソールを好む傾向にはあるものの、メンソールが他の通常のタバコと比べてより大きな依存性をもたらし、禁煙能力を減退させ、結果として健康被害を拡大させるといった、通説的な科学的根拠は未だ存在しておりません。

とすれば、通説的な科学的根拠がないまま、メンソールを他の通常のタバコと差別的に取り扱うことに合理性があるとは言えないと考えます。

よって、本件規制の「手段」たるメンソール販売の全面禁止は合理性を欠くと評価致します。

イ.次にメンソール販売の全面禁止という「手段」が、健康被害の削減及び若年者の喫煙防止という「目的」達成に役立つか検討します。

この点、メンソールが通常のタバコに比べ依存性が高く中毒症状を発症させやすいと考えているFDAとしては、メンソール販売の全面禁止という「手段」を採れば、その分愛煙家が減り、規制の「目的」である健康被害の削減に役立つと考えているようです。

しかし、現在タバコ市場の約3分の1を占めるメンソールを規制すれば、メンソールの闇市場での取引・売買(犯罪行為)が促進する恐れがあり、違法市場の増加に繋がる可能性が出てきます。

このような違法市場の拡大が進むにつれて、若年者の喫煙アクセスが今以上に容易となり、結果として、健康被害の削減及び若年者の喫煙防止といった本件規制の「目的」を損なう恐れが生じると考えます。

よって、本件規制の「手段」たるメンソール販売の全面禁止は健康被害の削減及び若年者の喫煙防止といった本件規制の「目的」達成に役立たないと評価致します。

ウ.最後に、健康被害の削減及び若年者の喫煙防止という「目的」を達成できるより緩やかな規制「手段」が他にあるか検討します。

この点、FDAが実施しようとしているメンソール販売の一律全面販売禁止は、BTIをはじめとする大手タバコメーカーの営業活動の自由に鑑みれば厳しすぎると考えます。

一律全面販売禁止という強硬的な措置を取らなくとも、メンソールタバコ購入の年齢規制をより徹底させる、メンソールタバコも通常のタバコと同様に有害であることをパッケージにしっかりと明記するなどの代替「手段」を通じて、健康被害の削減及び若年者の喫煙防止といった本件規制の「目的」は十分達成可能と考えます。

よって、健康被害の削減及び若年者の喫煙防止という「目的」を達成できるより緩やかな規制「手段」が他にあると評価致します。


以上を踏まえ、本件規制は裁判所の審査に耐えられない、即ち、裁判所のお墨付きを得られないと結論付けられます。

(※なお、ウェルズ・ファーゴのアナリストBonnie Herzog氏も、今回のFDAによる本件規制は裁判所の審査に耐えられないといったコメントを残しています。)


4.おわりに

今回の記事では、FDAによる本件規制は裁判所のお墨付きを得られないと結論づけたわけですが、これはあくまでBTI側に立った結論となっています。

従って、仮に私がメンソール販売規制を行おうとしているFDAの側に立てば、逆の結論を導く法律構成を立てることも十分可能です。

要は、本件規制が法廷闘争に持ち込まれた場合、法的にはどちらの結論も成り立ちうるということです。

次回の記事(中編)では、実際にメンソール規制が問題となり既に結論が出ている欧州司法裁判所での裁判を取り上げたいと考えています。
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参照記事①:(中編)【ブリティッシュアメリカンタバコ】FDAメンソール規制の実現可能性
参照記事②:(後編)【ブリティッシュアメリカンタバコ】FDAメンソール規制の実現可能性